去る10月10日(月)に、芸術学専攻教養講座の今年度第一回目土屋准教授による「美術発信のストラテジー」が行われました。
悪天候のなか、ご来聴いただいた多くの皆さまに改めて御礼申し上げます。
講座の主な内容は、土屋准教授が集団自衛権の閣議決定を受け、SNS(Twitter)を使用し呼びかけ、企画した「反戦展」について、どのような経緯で行ったのか、実際に当時のツイートなどを追いながら、社会と美術との「つながり」についてお話いただきました。
さて、以下に「美術発信のストラテジー」を聴講した、芸術学専攻1年生による感想を紹介します。
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感想①
今回、土屋先生の芸術学専攻教養講座「美術発信のストラテジー」を受講して、現代を生きる私たちが美術に関わる立場として将来のために何ができるのか、を改めて考えさせられました。集団自衛権や憲法九条などの政治的な問題に対して、実際に行動を起こしていくことの必要性を土屋先生が企画した反戦展が示したのではないかと思います。この展示会を開くにあたって、賛同者を募る際や展示会場の決め方、作品の配置にいたるまで反戦を訴える姿勢がぶれることなく公平なものであったという点が、コンセプトに合っていて素敵だと思いました。遠くない昔、地上戦があったこの沖縄でも何らかのアクションを起こしていくべきだと私は思います。一人でも多くのひとが広い分野に関心を持って未来をみつめられたらいいなと感じました。
(芸術学専攻1年 上間黎亜)
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感想②
右傾化する現在の日本の状況、具体的にいえば、日本の平和主義の在り方に対する、人々の意識の変化や、悪化する近隣諸国との外交問題などには、油断ならない危機感を抱くことがある。SNSやネットのニュースのコメント欄では、特定の国の人々に対する、または逆に日本人に対する、人種差別的な中傷が恐ろしいほど増えているし、そうした負の感情が冷静な判断力を人々から奪っているように思える。
未来から日本の美術史を眺めた時、今の複雑な時代に芸術家が何の行動も起こさないのは問題ではないだろうか。美術上の問題と国政上の問題は確かに関係がないかもしれないが、「美術」という表現手段を以て現状への批判としてのアクションを起こすのは、人々に善き関心と冷静な心を取り戻させるきっかけになるだろう。ただ、そうした美術は安易な非難として、むしろ問題の解決から遠ざけてしまうような、悪質なものとならないように気を付けなければならない、と感じた。
(芸術学専攻1年 長嶺勝磨)
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感想③
今回の教養講座は、土屋誠一先生自らが関わった反戦をテーマにした展覧会について、どのような経緯で展覧会を開いたか。またその展覧会の趣旨、工夫、意図などをわかりやすく講義したものでした。講座内容の中で特に驚いたのが、ポスターやチラシをあまり活用せず、自分たち学生もよく使っているツイッターなどのツールを活用して宣伝をして、成功を収めているという点でした。現代には現代にマッチした展覧会のありよう、ひいては芸術活動があり、僕たち芸術学専攻は広い視野を持って物事を考えなくてはならないと思いました。
(芸術学専攻1年 廣川純一)
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芸術大学において、「芸術学専攻」という場所がいったいどんなことをしているのか、疑問に思われる方も多いと思います。実際に(非常に残念なことに)学内においても、他専攻の学生に「芸術学ってなにしてるの?」と聞かれることもしばしばあります。確かに私たちは、絵画や彫刻といった作品を制作することを目的としているわけではありません。
私たちは、美術のさまざまな歴史を学び、そこに関係する偉人たちの思想を知り、考え、言葉にする方法を学びます。そして、作品をつくる作家とは別の視点で物事を捉え、美術に関する様々なことを社会に発信していく仕組みを学びます。
さて、みなさんは、「芸術学」という言葉からどのような学問を思い浮かべるでしょうか。この教養講座は、「芸術学」という魅力ある学問をひろく一般の皆さまに知っていただくため、毎年開講しているものです。芸術学専攻の教員が幅広いジャンルから提供する講座へぜひ足をお運びください。